どの家にも花が咲き乱れている。山から流れ出る溝の水は透き通って目が覚めるほど冷たかった。 村の半分は茅葺きの家である。ある茅葺きの家の前庭で老婆がひとりしゃがみこんで黙々と何かをつまんでいた。豆のさやをもぎっているようでもあり、細かな種をより選んでいるふうにもみえた。両膝が頭よりも上に出ていて、脚の間から顔がのぞいている、アクロバットかヨガでみるような異様な姿勢であった。人の気配を気にするでもなく、彼女は10分ほどの間、脚間の顔を上げることがなかった。| かっての朽木氏の檀那寺で、むかしは近江における曹洞宗の巨刹としてさかえたらしいが、いまは本堂と庫裏それに鐘楼といったものがおもな建造物であるにすぎない。 |
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